ビベス家
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スペイン北東部に位置するカタルーニャ地方のペネデスは、地中海に面した温暖な気候と多様な地形が特徴です。ペネデスは、文化的に豊かで、バルセロナに近いことから観光地としても人気があります。
ワイン産地としてのペネデスは、特にスパークリングワイン「カヴァ」の生産地として世界的に知られています。カヴァは、伝統的なシャンパン方式で作られ、マカベオ、チャレッロ、パレリャーダといった地元品種が使われます。
ペネデスではカヴァ以外にも、赤ワインや白ワインも生産されています。地元品種と国際品種が組み合わさり、豊かなアロマとバランスの取れた味わいが特徴のワインが生み出されている地域です。
ビベス家のワイナリーがある「エル プラ デ マンレウ(El Pla de Manlleu)」は住民が100人という静かで小さな村です。この村はスペイン・カタルーニャ州のワイン産地ペネデスの西北端に位置し、ペネデスの中では一番標高の高いマンデオ高原の山間部にあります。
1940年代にペネデスの主要都市ヴィラフランカと14世紀に建てられたサンタス・クレウス修道院を結ぶ道が通るまでは、密生した森林の山々に囲まれ孤立した地域でした。
村のぶどう農家は15軒あるうち13軒がオーガニック農法を行っていますが、ほとんどの農家はネゴシアンの大手ワインメーカーにぶどうを売るのみで、ビベス家のようにワインは生産していません。
ビベス家で造るカヴァは、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵の伝統製法で造られるカタルーニャ州のスパークリングワインです。祖父の代に醸造施設をリニューアルし、1987年からカヴァ造りを行っています。
ワイナリーはジュアンさんを中心に、奥様のテレサ・オリヴェさん、息子のギエムさん、娘のライアさんの4人家族で運営しています。
絵を描くことや音楽も好きだという芸術家肌なジュアンさんですが、やはり一番好きなのは農業をしているとき。コーヒーを飲んで落ち着いた時間を過ごすことも好きだというジュアンさんの穏やかな人柄を感じます。
オーガニック歴:有史以来(認証は2003年から)
ビベス家は1869年にこのワイナリーでワイン造りを始め、現在は5代目。1987年に醸造所を新しくし、カヴァ造りに取り組みました。
ずっと化学肥料や除草剤などを使わずにぶどう作りを続けていましたが、1997年から本格的にオーガニック栽培に取り組み2003年にオーガニック認証を取得しました。
ジュアンさんは自然な農法や醸造方法で品質を高めていくと、ぶどうやワインが持つ本来の特性を表現できると考えています。
オーガニック農法では自然を尊重しながら健康な作物を生産できるので、農園自体にもメリットは大きいのです。ジュアンさんたちは地中海沿岸に昔から伝わる栽培法に基づいた農法を実践しています。
これからもなるべく自然の方法でずっとワインを造り続けることを目指しています。また自分たちがこういった方法でワインを造ることで、他の人たちも一度は農薬や殺虫剤などで失われてしまった自然の豊かさを取り戻せるように働きかけていきたいのだとジュアンさんは語ります。
・白ぶどう:パレリャダ、マカベオ、ガルナッチャ ブランカ、シャルドネ、チャレッロ
・黒ぶどう:メルロー
畑の広さは全体で8~9ヘクタール。土壌は石灰質で、地下3メートルから15メートルに岩盤が存在しミネラル分が豊富です。
先祖代々150年かけて耕してきた畑に、今は土壌の活性化のため白いんげんや様々な草花の種をまいており、これらの植物の根が土を柔らかくし、また窒素を含ませてくれています。
夏は日差しが強く乾燥した地中海性気候の典型的な気候ながら、標高の高い場所にある畑は山の麓よりも平均して約4度ほど気温が低くなり、雨量も多めです。
収穫は9月末から10月初めという他の地域より3週間ほど遅れた時期に始まりますが、その分ぶどうがゆっくり成熟するため、良い酸ができ、ぶどうの香りをキープできるそうです。
海からの風に含まれる湿気は少ないため、夏でも夜間の気温が下がり1日の寒暖差が大きくなります。
ジュアンさんのカヴァ ブリュットはマカベオとパレリャダというぶどう品種から造られます。平均樹齢はマカベオが20年、パレリャダが45年です。
この土地に一番適しているのはパレリャダ種で、高地のためペネデスの他の産地よりもゆっくり成熟し、平地のものよりミネラルを吸収した力強い味わいと、リンゴや洋ナシのような芳香が得られます。平地のネゴシアン(ぶどうを買ってワインを造るワインメーカー)はこの香りを加えるためにわざわざこの村のぶどうを買うほどです。
剪定では、ぶどうの生産量を一定に確保しながらも木に過剰な負荷をかけて質を落とすことがないよう調整に気を使います。
今は、これまでの研究や経験から1ヘクタール当たり7,000~9,000キログラムの収穫量を目安としています。
収穫は全て手摘みで行います。
ビベス家が理想とするのは、工業的で画一的な大量生産品のいわゆる「カヴァ」らしい味わいではなく、自分たちが住む土地のぶどう品種の特長を最大限に引き出した「自分たちだけのカヴァ」です。
そのために心がけているのは、なるべく人の手を介入させず、余計なものを添加せず、自然のバランスを大切にしながらワインそのものが望んでいる本来の味を表現することです。発酵も自然酵母のみ。
マヴィで取り扱うカヴァ ブリュットは、その年のぶどうの収量にもよりますが生産本数はおよそ年に10,000本。
フレッシュで、程よい酸味の中にミネラルを感じます。樹齢20年の若いマカベオ種からは梨や熟したりんご、マルメロの香り、樹齢の高いパレリャダの古木からは土壌のニュアンスがそれぞれもたらされ、そこに熟成によって生まれたヘーゼルナッツやカシューナッツの香りが溶け合っています。
ビベス家では通常、注文が入ってから下のような状態で保管していたワインのデゴルジュマン(澱抜き)をして仕上げてから出荷します。
斜めにした瓶を少しづつ傾けて、ワインの澱を瓶口に集めるためにボトルを立てる板。
優しい泡がゆっくりと立ち上るジュアンさんのカヴァは、工業的な製品とは違い、手作りの温かさがあります。
わざわざ出荷前に1本1本澱抜きをして仕上げるのは、何よりもフレッシュなワインを楽しんでもらいたいから。
熟成を楽しむタイプのワインではありませんので、お手元に届いたワインはできれば早めにお飲みいただくのがおすすめです。
ビベス家のワインは、特別なコンクールの受賞歴やメダルがあるわけではありません。理由を尋ねると、ジュアンさんたちは大きなコンクールに参加したり、有名なワインガイドに自分たちのワインを載せることを信条としていない、とのこと。
「ワインを選ぶときに、ワイン業界の流行や著名人のコメントに左右されることなく、ワインを楽しむ人それぞれが私たちのワインを味わって判断してもらうことがベストだと信じています」
ぶどう栽培、醸造、そしてその成果でもあるワインの販売。ワイン造りに関わる全ての段階において、私たちは、愛情と繊細さそして高い意識を持って取り組むようにしています。ワイン造りに携われることへの喜びを噛みしめながら……。
そして環境に配慮しお互いを大切にしながら、今ある素晴らしい遺産を残すために未来に向かって進んでいきたいと思います。
私たちの熱い思いとペネデスの小さな村の風景を、近くに住む人たちだけでなく、カヴァという形を通じて地球の反対側に住む皆さまにも伝えられることが私たちはとても嬉しく思います。
ぜひ私たちの自然豊かな小さな村の風景を思い浮かべながらカヴァを楽しんでくださいね。